ストラテジック・コンサルティング(Strategic Consulting)は、事業再生、資金調達などのビジネスリスクに特化したコンサルティングを実施しております。

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5つの「想定外」を想定外にする本当に役立つBCP作成の極意

2012/03/01

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「近代中小企業」4月号に「事業再生のプロが見る金融円滑化法その後 第2回実践:経営改善計画書」と題して執筆しました。

Special Feature
現場力
BCP策定の意義と活用
前編

5つの「想定外」を想定外にする
本当に役立つBCP作成の極意

中小企業のBCP(事業継続計画)策定率が芳しくありません。理由は、中小企業庁、東京都産業局、東京商工会議所(東京のケース)がBCPのひな形を用意するなど、行政等の「手厚さ」が逆に中小企業の甘えを生んでいるからです。また、BCPの問題点を二つ指摘 すると「ひな形の内容そのままで担当者一人に作成させて、作った気でいる経営者が存在すること」「BCPはいつでも作れる宣言を経営者がしてしまう」ことです。本稿では、BCPに比べて策定率の高い防災計画と絡めて、問題点(想定外)を5つのポイントに分け て解説します。

防災計画とBCPの違い
会社の防災対策や防災マニュアルを意味する「防災計画」と「BCP」どこが違うのでしょうか。
災害への備えという観点は共通点ですが、根本的に考え方が異なります。まずは、両者の違いを明確にしてみましょう。

●着眼点や内容の違い
防災計画では、それが会社の中であっても、人命の安全と建物の資産保全に焦点が置かれます。そのため、安否確認、備蓄、避難訓練が3点セットとなっていることが多いのです。
BCPでは、そうした対策を取った上で、優先的に復旧する事業を選定します。つまり、BCPは単なる防災ではなく、ビジネスの視点で災害からの復旧を目指すものなのです。

●策定単位の違い
防災計画は、本社や支社、拠点、工場など、場所単位で取り組みます。
BCPは場所単位ではなく、事業全般で取り組むものです。なぜなら、一番重要な事業は何か?
どのお客様にどの製品やサービスを供給するのか?
といった視点で捉えるべきものだからです。

●計画への評価
防災計画では、労働安全的、人道的な観点からの評価が求められます。
なぜなら、命が助かることがすべてであり、延焼火災や危険物の漏洩事故を防ぐなど地域に迷惑をかけないことが目的とされるからです。
BCPの可否は、その会社を取り巻く関係者(お客様や取引先)が評価します。なぜなら、BCP は会社そのものが評価される尺度で策定されるからです。

●責任者
防災計画は、主に総務や労働安全衛生などの部門が担当し、その部門のトップが責任者に就任することが多いです。
BCPは、全社的に取り組みます。一番重要な中核事業を決め、一連のラインに関与する部門とそれをサポートするすべての関連各所が関わる必要があります。
BCPとは全社的なものであり、責任者は経営者が就任すべきなのです。
BCP策定は、単なる防災対策ではありません。事業をいかに継続するかを念頭においたものであり、さらにいえばビジネスそのものなのです。

策定における「想定」の誤り

BCPは、ヒト・モノ・カネに代表される経営資源の一つに含むべき重要なものです。
昨今、第四・第五の経営資源として、会社の持つ技術力と情報量を加える向きもあります。
しかし、会社がBCPを発動させる事態に直面したとき、まずこれらの経営資源をいかに早く復旧させ、中核事業に集中できるかが重要です。
会社の受けるダメージを少なくし、早期復旧に漕ぎ着けることができるかが、BCPの有無で大きく分かれてしまうのです。
会社の防災計画は、作ろうとすればひな形は溢れています。
それこそ、総務担当者がひな型から防災計画を作成し、人事異動の際に責任者と係の名前を、その担当者が変えて申し送りしているのが実態でしょう。
しかしBCPは、そうはしてはいけません。BCPも前述したように「手厚い」ひな型が用意されています。小さな会社であれば、たぶん一人の担当者で「空欄埋め」ができ、「完成」させることも難しいことではありません。
ところが、それこそが要注意点なのです。
では以下に、個人担当者が策定時の「想定」で陥りやすい、
「誤り=想定外」を挙げてみましょう。

(1)担当者だけでなく、経営者がBCPを本当に理解しているか
BCP策定時に最も必要なことは、経営者本人がBCPを本当に理解していることです。
通常中小企業では、BCPの責任者は経営者が就任します。経営資源の適正な配分は経営者の成すべき領域です。
経営者はいざという時も、残存する経営資源の適正な配分が求められます。
BCPを発動すべきか否かの判断も経営者がすることなのです。
経営者本人がBCPを理解していることが大原則です。

(2)会社が直面する災害・事故・事件リスクが認識されているか
記憶に新しい東日本大震災や17年前の阪神淡路大震災に見られるように、日本は地震の多い国です。
防災計画が地震被害を想定して策定されることは当然だと思いますが、それだけで終わっているような気がします。
兵庫県で製造業を営むある会社の防災計画は、発動時期を「震度6以上の地震、その他の大災害」とありました。
「その他の大災害」と一括りにせざるを得ないのが、この会社の防災計画の限度かも知れません。
ここで、会社が直面する災害・事故・事件リスクにはどのようなものがあるのか、図1をご覧ください。
BCPでは、災害・事故・事件リスクが、何なのかが非常に重要です。
これらの中から自社に被害を与える可能性が高いリスクを「複数」選択して、その中で一番起こりやすいリスクを認識して策定しなければなりません。
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陥りやすい誤りとして、防災計画では地震の大きさです。
例えば、震度6などの災害規模で発動可否を求められますが、BCPはあくまで、「そのリスクによって事業が継続できない状態に陥るとき」を発動時期とするのです。
したがって、震度6でも被害が軽微で事業に差し障りがなければ発動しませんし、震度5弱でも主要機器が損壊して事業継続に支障が出れば、BCPは発動されなければならないのです。

(3)中核事業は影響度の判断要因で選定されているか
・災害が起きれば全事業はストップし、売上に多大な影響を与える
・わが社の売上構成の中で一番大きいのは△△事業だ
・△△事業が早く復旧すれば売上減少のダメージは比較的少なくて済む
・だから△△事業がわが社の中核事業である

これで本当にいいのでしょうか。BCPでは、限られた経営資源を有効活用しなければなりません。だからこそ中核事業の概念があるのです。
中核事業は何も売上構成に傾注することはないのです。
図2は、中核事業を影響度で判断する一例です。
組織のしっかりとした会社であれば、ビジネスインパクト分析を行い経営資源毎に詳細に分析することができますが、中小企業においてのスタートとしては、図2による中核事業の選定を勧めます。
各判断要因を5点満点で判定し、評価点計から最終判断するのが一般的です。

(4)復旧を阻むボトルネックが正確に分析されているか
ボトルネックとは、③で選定した中核事業の復旧を阻む要素のことをいいます。
例えば、システム会社が中核事業のシステム開発業務を復旧させようとしても、技術者が居なければ復旧できません。ボトルネックは技術者です。
このように事業のラインを洗い直すと、様々な脆弱性が浮かび上がります。それらを事前に準備して対応するか、または代替策を講じて対応します。
事前準備の例として、停電時の自家発電用の燃料確保などが考えられます。
代替策の例として、自社の運搬用トラックが使えない場合には、販売先から商品を取りに来てもらうことが考えられます。

(5)BCPを周知させ訓練し見直されているかBCPは出来たら終わりではありません。
BCPはいざという時のため「いつでも使える」状態でなければなりません。
策定担当者の「労作」を経営者に十二分に理解させ、会社の幹部・社員に研修するのはもちろんのこと、策定担当者が合わせてチェックリストを作成して提供しましょう。
出来上がったBCPの間違い探しや、ボトルネックの対応で新たなアイデアを募集することは、社員が自発的にBCPを維持、発展させていく上で重要なことなのです。
また、災害・事故・事件が発生した場合の各自の役割を認識してもらう上で、次の訓練を勧めます。
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・社員各自がチェックリストに基づく自主訓練
・各事業で役割分担を確認する机上訓練
・会社の幹部による対策本部設置訓練
・緊急連絡網、緊急連絡応答の訓練
・安否確認訓練
・データのバックアップ、復元の訓練
このような訓練がBCPの実効性を高め、また、漏れや抜けを見つけ出すことができます。
人事異動や事業ラインの変更が発生すると、BCPを見直さなければなりません。BCPは常に使える状態にしなければならないのです。

BCPは分厚ければそれでいいのか

せっかく策定したBCPが、膨大なページ数になってしまっては読む気になれません。
少なくとも部門や部課毎に分冊すべきです。普段は使わない資料なので、手に取るところに置かれることはなく、書類キャビネット行きになるのは必定です。
さて、いざという時それを持ち出せますか?
BCPは、平常時は訓練や見直しで使われますが、使われない時間が圧倒的に長いのです。
しかしながら、いざという時は最も優先度の高い資料になるのです。
BCPが発動されたら、BCPに則ったチェックリストを活用しましょう。
これは、少なくとも部課毎に用意する必要があります。
つまり、チェックリストが使えるまでに各自の役割を読んで理解しておき、記憶があいまいな部分だけ読み返す、といった訓練が必要なのです。
したがって、社員各自がチェックリストを使えない状況は、BCPの運用として十分な体制とは言えません。
また、紙ベースのBCP「正本」の他に、電子データ化されてネット上の書類保管サービスで保管される「副本」の作成を勧めます。
いざという時もスマートフォンなどで確認できますので、新しい活用方法として考えてください。

おわりに...
「想定外」を想定外に

中小企業のBCP策定率は、まだ3割だといわれています。
残る7割は、前書きで述べた「いつでも作れる」宣言の会社と、「そもそもBCPって何?」の会社でしょう。
この誌面をお読みの読者の属する会社が、BCPの策定はまだであれば、少なくとも前者の「い
つでも作れる」宣言の会社であってほしいと思います。遅くはありません、策定への一歩を踏み出してほしいものです。
せっかく作ったBCP、そのBCPを維持していくためには、会社の経営資源をBCPの運用に費
やすという発想が必要です。
そのような経営資源の投入が継続して行われなければ、せっかく策定したBCPが、徐々に有効性を失ってしまいます。
最重要ポイントは、「(2)会社が直面する災害・事故・事件リスクが認識されているか」です。
これが十分に吟味されていないのは、「想定外」といえます。
また、(3)(4)の中核事業の選定ならびにボトルネック分析は、その後の会社を大きく左右します。
その選定と分析を誤ることは「想定外」です。
さらに、(5)のBCPの周知と訓練が策定されたままで、放っておかれるのは「想定外」です。
さて、繰り返しになりますが、BCPは平常時には発動しません。
いざ発動する時がいきなり「本番」なのです。
その時、(1)のBCPを理解している経営者は、冷静さを保ちBCPを発動してください。
幹部や社員が動揺していれば、落ち着かせてください。経営者が自ら動揺し、BCPに書かれる責務を果たさないことが最も「想定外」なのです。

一般社団法人兵庫総合研究所では、小さな会社のBCP策定をお手伝いしています。
小さな会社だからこそ、BCP発動時にはさらに限られた経営資源で対処せねばならないのです。
兵庫総合研究所のBCP策定サービスは、経営者とともに作り上げるものです。
BCP発動時に迅速な初動ができることを最大の目的とし、危機に敏感な企業文化の形成をお手伝い致します。